性的少数者に転職支援サービス誕生 NHKが全国ニュースで報じるなど社会的反響
[記事ソース:J-Castニュース] 2014年7月26日
心と体の性別が一致しない性同一性障害や同性愛など性的少数者(LGBT)の求職者と、LGBTに知識と理解のある企業をマッチングさせる業界初の人材紹介・転職支援サービスが2014年7月16日、始まった。
NHKが全国ニュースで報じるなど、新たな試みが社会的にも注目されている。
■約20人に1人がLGBT
紹介サービスを始めたのは、人材紹介やIT関連のベンチャー企業「ネオキャリア」の子会社「ワイルドカード」。22日までに200人を超える求職者の登録があり、企業側からも30社前後の引き合いがあるなど、「予想を上回る反応」という。
LGBTとは、▽レズビアン(Lesbian、女性同性愛者)▽ゲイ(Gay、男性同性愛者)▽バイセクシュアル(Bisexual、両性愛者)▽トランスジェンダー(Transgender、性同一性障害を含む体と心の性が一致しない人)の頭文字で、性的少数者の総称だ。
電通総研が2012年、全国の20~59歳の男女約7万人を対象に行ったアンケート調査によると、LGBTは5.2%(3637人)を占めた。約20人に1人がLGBTという割合だ。LGBTと答えた人々の約7割が「職場で差別的な言動がある」と回答しており、職場での人間関係などに悩み、転職を余儀なくされるケースが多いという。
職場のLGBT問題に取り組むNPO法人「虹色ダイバーシティ」(大阪市淀川区)によると、「日常的に性的少数者をからかうような職場の雰囲気が無形の圧力となっている。問題が起きた時に相談窓口となるはずの人事部門、労働組合、契約医療機関等も、性的少数者に関する知識があるのかわからず、利用するのをためらってしまう」という。その結果、「性的少数者とわかった時、職場いじめ、昇進差別、解雇などに遭う恐れがある」というから、問題は深刻だ。
高学歴、高収入が多い
ワイルドカードが開発したサービスは、求人者がLGBTであることを専用サイトを通じてカミングアウトして転職活動するため、多様性を重視する企業を紹介することが可能となる。電通総研の調査によると、「LGBTは高学歴、高収入の優秀な人材が多い」とされ、ワイルドカードは「LGBTの採用は、景気回復による人材採用の売り手市場感が高まる中、企業が優秀な人材を採用するうえで非常に有効といえる」と話している。厚生労働省は男女雇用機会均等法の施行規則(セクシュアルハラスメント対策の指針)を改正し、7月1日に施行。「職場におけるセクシュアルハラスメントには同性に対するものも含まれる」と明示し、LGBTを含むセクハラ対策を講じるよう求めた。
東洋経済新報社が発行する「CSR企業総覧2014年版」によると、LGBTの権利尊重や差別禁止の基本方針が「ある」と答えた国内企業は607社中114社にとどまっている。
近年、企業の間では、率先してLGBTの存在を認め、多様性を尊重する姿勢を明確にしているところもある。
野村証券を傘下にもつ野村グループは社員が遵守すべき倫理規定の中に「性的指向、性同一性障害の有無等を理由とする、一切の差別やハラスメントを行わないものとする」と明記。資生堂は取引先を選定する行動基準に「性的指向などによるあらゆる差別や虐待を行わない取引先を支持します」と明記。自治体の中でも大阪市淀川区が「性的少数者に配慮した行政を目指す」と宣言するなど、多様性を尊重する先進的な取り組みが広がっている。新たな転職サービスの誕生は、LGBTと企業の関係に一石を投じたのは間違いない。
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