LGBT(性的少数者)悩む子へ 多様性 絵本で伝える
[記事ソース:東京新聞] 2015年11月14日
心と体の性が一致しない性同一性障害者らLGBT(性的少数者)は幼いころから、友達との違いに悩み苦しむことが少なくない。人の多様性を題材にした絵本が、自己肯定感を育むきっかけになるとして注目されている。 (山本真嗣)
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「みんなと おなじが いいのかな? そんなことも、ちょっと おもって みたわ。だけど、わたしは、あかねこ。そのままの じぶんが よかったの」
性同一性障害者で、絵本を通じてLGBTの理解を訴えている清水展人(ひろと)さん(30)は十一月初め、地元の徳島市の小学校を訪れ、五、六年とその保護者ら約三百人に絵本「わたしはあかねこ」を読み聞かせた。
両親の毛色は白や黒なのに、きょうだいの中でただ一匹、赤いネコの物語。親はミルクや黒い魚をたくさん与えて色を変えようとするが、あかねこは赤毛を「わたしらしさ」と思い、家を出る。そこで出会った「あおねこ」は赤毛を「きれい」と言ってくれる。
二年前に絵本を知った清水さんは「自分と重なる」と感激。「子どものころにこんな絵本があれば、もっと早く自分を受け入れられたかも」と話す。
三人姉妹の長女だった清水さんは、幼いころから男の子の服を好み、好きになるのは女の子。友達からは「おとこおんな」とからかわれ、家族からは「女の子らしく」と促された。「自分は異常なのか」と感じ、「死にたい」と思ったこともあった。高校時代にテレビドラマで性同一性障害を知り、「自分だけではない」と前向きに。性別適合手術を受けて戸籍も変更し、三年前に女性と結婚した。
「人種や国籍、髪の色…。いろんな人間がいて、性のあり方も違いの一つでしかない。絵本はその本質をすっと伝えてくれます」
「わたしはあかねこ」の作者で、大垣女子短期大(岐阜県大垣市)客員教授のサトシンさん(53)は「自分を好きになることが生きる礎になることを表現したかった」と、絵本に込めた思いを語る。
岡山大大学院の中塚幹也教授(54)の調査によると、国内の性同一性障害者は五~六割が小学校入学前に違和感を覚え、中学生までに九割以上が自覚。自己肯定感が低く、七割が自殺を考えたことがあるという。
LGBTを支援するNPO法人「ReBit」(東京)の薬師実芳(みか)さん(26)によると、米国やオランダなどには、雄のペンギン同士が子育てをした実話や、王子同士の同性婚、一人親家庭を題材にしたものなど、多様性をテーマにした絵本が多くあり、幼稚園の教材などに使われている。日本語に翻訳されたものは少ないため、薬師さんらが独自の絵本作りに取り組んでいる。近く四冊が完成予定で、学校などに貸し出す予定だ。
LGBTに詳しい中京大(名古屋市)国際教養学部の風間孝教授(48)は「孤立感にさいなまれている子どもが、家庭や学校で多様性を認める絵本に触れることができれば、大丈夫と前向きなメッセージとして伝わる」と話す。