50代にして男になると決断した母親 | 性同一性障害(GID)、性別違和(GD)の情報サイトGIDinfo.jp

50代にして男になると決断した母親

[記事ソース:週刊朝日] 2014年7月14日

お母さんが、ある日を境に、「お父さん」になった──。2人の子どもを育てながら、50代にして「男性」になることを決めた性同一性障害の人がいる。40歳のとき、「男になりたい」と夫に告げると、夫は絶句。「家族」という形を続けながらも、男性として生きる道を探り続けた。46歳で胸を除去する手術を受け、その2年後、男性ホルモンの注射を打ち始めた。新潟県に住む佐藤光さん(仮名、51)だ。

* *  *
<2004年に施行された性同一性障害特例法により、2人以上の専門医の診断と、一定の条件をクリアすれば、戸籍も変えることができる。その条件とは、(1)20歳以上(2)現在、婚姻関係を結んでいない(3)現在、未成年の子がいない(4)生殖機能がない(5)変更後の性別に近似する性器の外観を備える──こと。

 法務省によると、13年3月末までに3903人が変更した。

 だが、佐藤さんのように結婚後、戸籍を男性に変える場合、ややこしくなる。
 現に婚姻をしていないことが条件のため、子どものために今の夫と結婚生活を続けたくても戸籍上、不可能になるのだ>

 完全に「男」になるため、娘が20歳になるのを待って名前も戸籍も変えたいと思っています。だけど、今のままでは離婚は避けられない。法律上無理だし、夫にも、こんな自分とでなく、きちんとした女性と第二の人生を歩んでもらえたらと思う。今、最も心配しているのは、子どもたちへの説明。見た目が変わっていくことでなんとなく気づいているようだけれど、近くにいる分、言いづらい。娘は以前、自分のクラスに性同一性障害の子がいると話してくれたのですが、そのときは自分もそうだとは言えませんでした。

<13年には、最高裁が、女性から性別変更した男性とその妻の間に、第三者からの精子提供で生まれた子との親子関係を戸籍上も認める決定をした。社会は変わりつつある。

 しかし、「日本性同一性障害と共に生きる人々の会」の山本蘭代表によると、佐藤さんのように年配になってからの変更は、世間的に高いハードルが待っているという。

「特に、年配になって変わりたいという人は、外見がなかなか伴わないため、周りからも敬遠され、会社を辞めさせられたり、うつになったりするパターンも多い。性同一性障害は一般的に認知されるようになったとはいえ、まだまだ壁はある」(山本さん)>

 仕事も不安です。女性として入社した自分が、男性に変わったら、同じように雇い続けてくれるのかどうか。年配の方が多い職場で、こういう生き方を理解してもらえるだろうか。50歳を過ぎて職がなくなったら、正直、つらいです。もう正社員として雇ってもらうのは難しいでしょう。夫や子どもが周りから何か言われないよう、離婚したら住んでいる町を離れる予定です。

 40代のときは、子どものため、家族のためと思っていたが、50代になって、もっと自分の生き方を求めていいんじゃないかと思った。自分勝手で申し訳ないが、夫と子どもに詫びながら、自分らしく生きていきたいと思っています。

[提供元:週刊朝日] [記事全文を表示]