性同一性障害のシンガーソングライター中村中、新アルバムで原点回帰
[記事ソース:ZakZak] 2014年9月26日
性同一性障害を告白しているシンガー・ソングライター、中村中(あたる、29)が、6枚目のアルバム「世界のみかた」(テイチク・エンタテインメント)をリリースした。初回限定盤には収録曲の順序を逆にした「逆位置盤」も加えた。「同じものでも見方によって異なる意味になる」と中村らしい発想の1枚。アルバムに込めた思いを聞いた。
初のセルフプロデュースとなるテイチク移籍第1弾アルバムで、最新シングル「幾歳月」のアルバムバージョンなど11曲を収録。「逆位置盤」について「物事は一方向だけでは、真意がつかめないから」。曲順を逆にしただけで、印象ががらりと変わるから不思議だ。
今回は「何をテーマに歌うべきか」という根本的な悩みに直面しながら制作に臨んだ。そして、自身の原点に立ち戻ることになったという。
「曲作りがうまく進まないとき、『私はなぜ歌おうと思ったのか』と自己分析したんです。初めて曲を書いた10代の頃、いじめや性別へのコンプレックスがあったけど、相談できる相手がいない。でも、このパワーをぶつけるものがほしい。それが私の曲作りだと。モチベーションは『嫌な自分をどうするのか』で、そこにパワーがあると再確認できました」
20代最後の年に意欲作を完成させ、12月には単独ライブ「敵か!? みかたか!?」が控える。「30代はやりたいこととやれることを分別する時期。だから、20代のうちに精いっぱいあがいて作ったアルバムが出せて、ライブでその世界観を表現できるのはうれしいです」
舞台や朗読劇でも活躍している中村。11月には中島みゆき主催の音楽劇「夜会VOL・18『橋の下のアルカディア』」に出演する。「みゆきさんとお仕事をご一緒するのは初めて。オファーが来たときは『まさか!?』と思いました。まだ全貌が見えていませんが、とっても楽しみですね」
自身も迷い、悩みながらも、痛みを抱えて生きる人に寄り添うため歌の道を歩み続ける。「輝かしい未来を歌う曲もいいですが、あきらめたりする瞬間だってある。そんなときに聴ける曲の存在が大事だと思うんです」
その表情は、優しく慈愛に満ちていた。 (磯西賢)
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