性的少数者 広がる理解 同性カップル 結婚証明書 渋谷区条例案 他の自治体も対応検討
[記事ソース:西日本新聞朝刊] 2015年3月1日
■新訳男女 語り合おう■
東京都渋谷区が同性カップルを「結婚に相当する関係」と認め、証明書を発行する条例案を3月議会に提出する。可決されれば、全国でも初めての制度となる。世界で同性婚を認める動きが広がる中、国内の自治体でも性的少数者(LGBT)に対する理解を深めようとする動きが広がりつつある。13日付朝刊で各自治体の動きに触れたが、詳しく紹介する。12日、記者会見した渋谷区の桑原敏武区長は「多様性のある社会をつくっていくことが、活力を生む。渋谷区からの発信が国を変えていくかもしれない」と意義を強調した。
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互いを後見人とする「パートナーシップ証明書」発行の規定のほか、男女平等やLGBTの人権の尊重を区民や事業者の責務として盛り込む。証明書の発行は、区内在住の20歳以上の同性カップルが対象。
区は証明書を持つカップルに対し、家族向け区営住宅の入居を認める。区内の事業者には夫婦と同様に扱うよう求めるため、家族ではないとして断られていた病院での面会や手術の同意書へのサイン、会社での家族手当支給などに道が開ける。条例の趣旨に反する行為があった場合、事業者名を公表する方針だ。
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同様の仕組みを検討する自治体も出てきた。
東京都世田谷区は昨年、区民約3千人を対象に意識調査を実施。「性的少数者の人権を守る啓発や施策を必要と思うか」という質問に、70%が「必要」と答えた。「必要ない」はわずか4・3%で、現在支援策を検討中だ。
横浜市の林文子市長も、2月の定例記者会見で「一緒に暮らし、強い結びつきを持っている同性カップルも少なくない。社会の一員として受け入れていくことは大事」と述べ、市としての支援策を検討するよう担当課に指示した。
大阪市淀川区は2013年に「LGBT支援宣言」を公表し、職員研修や電話相談などに取り組む。東京都文京区や多摩市など、性的指向と性自認による差別禁止を盛り込んだ条例を制定している自治体もある。
九州でも少しずつ、動きが出ている。福岡市人権推進課は13年、申請書などの不要な性別欄を廃止するよう、依頼文書を全庁に配布した。市民税・県民税申告書や印鑑証明書など、約350件のうち3分の1が性別欄を廃止する見込みだ。同市では、登下校時の交通安全のため、小学1年生に男女で形が異なる黄色い帽子を配布してきたが、新年度からは形を統一する。どちらも、LGBTに対し人権面で配慮したという。
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日本では、憲法24条で婚姻は「両性の合意」のみに基づいて成立すると定められている。同性婚は法律上認められず、相続や税、社会保障などの権利や優遇措置は受けられない。安倍晋三首相は18日の参院本会議で、「同性婚を認めるために憲法改正を検討すべきか否かは、わが国の家庭のあり方の根幹に関わる問題で、極めて慎重な検討を要する」と述べた。
世界では約20カ国が同性婚を認め、夫婦に準じる権利を認めるパートナーシップ制度を整備している国も25カ国以上に上る。国連の自由権規約委員会は昨夏、日本に対してLGBTへの差別や偏見をなくすよう勧告した。