性同一性障害 2015年末までの受診2万2000人 認知広がり増加
[記事ソース:東京新聞] 2017年3月19日
心と体の性が一致しない性同一性障害(GID)で国内の医療機関を受診した人が、二〇一五年末までに延べ約二万二千人に上ったとの調査結果を日本精神神経学会の研究グループがまとめ、札幌市で十八日に始まったGID学会総会で公表した。一二年末時点の前回調査と比べ、三年で約五割に当たる七千人増加した。実際のGID当事者はさらに多いとの見方が強い。
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障害への社会の認知が広がり、当事者の意識も変化したことが増加理由とみられる。当事者は国内に数万人いるとされるが、受診者数で改めて裏付けられた。専門家は「児童、生徒や高齢者を中心に、まだ医療機関を受診できていない人もいる」とし、今後も受診者数が増えると指摘した。
研究グループの針間克己(はりまかつき)医師らが、GID当事者が受診しているとみられる各地の二十六医療機関にアンケートを実施。医師がGIDと診断した人数を集計したところ、一五年末までに延べ二万二千四百三十五人だった。一四年にも同様の調査を行い、一二年末までの受診者数を集計。その際は延べ一万五千百五人だった。
今回調査で、体が女性で心は男性の受診者が一万四千七百四十七人だったのに対し、逆のケースは七千六百八十八人だった。針間氏らは、二十六医療機関以外で診断を受けた人もいるとみて、国内の当事者数を約二万五千人と推計した。
GID学会理事長の中塚幹也・岡山大大学院教授(生殖医学)は「障害への理解を深め、いじめや差別などの二次被害をなくすためにも、当事者の数を示すことは重要だ」と指摘。行政や医療機関の態勢づくりで、議論を促したいと話した。
<性同一性障害> 心と体の性が一致しない障害。原因は分かっておらず、医療機関ではカウンセリングやホルモン療法、性別適合手術などを行う。2004年施行の性同一性障害特例法により、(1)2人以上の医師による診断(2)20歳以上(3)結婚していない(4)性別適合手術を受けている-などの条件を満たせば、家庭裁判所に請求することで、戸籍上の性別変更が可能となった。同法施行から15年末までに、約6000人が性別を変更している。